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マイナーの動きによって、ビットコインの価格が変化することがあるという分析がよく行われます。マイナーがどのように動くと、ビットコインの価格はどのように動くか知っていることで仮想通貨投資をする際に役立ちます。今回は「ビットコインの価格とハッシュレートの関係」です。先に結論を述べると、ハッシュレートの上昇は、価格の上昇可能性を示唆しています。なぜそのように分析することができるかまで知っておくことで、さらなる分析ができると思います。
目次
ハッシュレートとは?
そもそもハッシュレート(Hash rate)とは、ビットコインのマイナーがマイニングに使用する演算のパワーの単位です。もう少し具体的に言うと、マイナーが演算を1秒間に何回行っているかを表す単位です。「hash/s」または「H/s」と表記します。sはsecond(=秒)を表しています。
ハッシュレートやhash/sの「ハッシュ(hash)」とは、ビットコインのマイニングで行う演算の種類が「ハッシュ演算」という名前であることから来ています。
マイニングでは、ハッシュ演算を数多く行います。特にビットコインの「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」と呼ばれるマイニングのルールでは、ハッシュ演算をとにかく早く、多く行なった人が報酬を受け取ることができるため、マイナーはこのハッシュレートの高さをこぞって競争しているのです。
〜ビットコインの仕組みについて詳しく知りたい方はこちら〜
初心者にも分かるビットコインとは。仕組みを非エンジニアでも理解できるようわかりやすく解説!
プルーフ・オブ・ワークとは
プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)とは、ビットコインなどで採用されているルールです。ビットコインには、特定の管理者がいないためビットコインの送金が正しく行われているかどうかを参加者が確認・承認する必要があります。
確認や承認をする人はマイナーと呼ばれ、承認作業のことはマイニング(「採掘」から由来)と言います。マイナーは多くいますが、10分に1人だけが承認者に選出されます。その選出された一人が、10分間にあったビットコインのやり取りを検閲し、不正がないか確認するのです。
その選出方法のルールがビットコインでは「プルーフ・オブ・ワーク」と呼ばれるものです。プルーフ・オブ・ワークは、「最も早く(多く)演算を行なった人が承認作業者として選出される」というルールになっています。
マイナーが行う演算は、すでに述べた「ハッシュ演算」という演算です。この演算を行うためには、コンピューターやそれを稼働する電力、そして稼働したコンピューターが熱を持ってしまうため冷却装置&冷却装置を稼働するための電力、が必要になります。
そして選出されたマイナーは、報酬としてビットコインを受け取ります。
これらのハッシュ演算を行う設備=先行投資がマイナーには必要になるため、ビットコインのやり取りが正常に行われずにビットコインの信頼が失われてしまうのは困ります。なぜなら報酬のビットコインの価格が崩壊してしまっては、マイナーの先行投資は取り戻すことができないからです。
このような経済インセンティブが働き、マイナーはビットコインのやり取りで不正が行われていないかを厳しくチェックするようになります。これがプルーフ・オブ・ワークによって支えられているビットコインの取引承認の仕組みです。
プルーフ・オブ・ワークについて詳しくは以下でも解説しています。
プルーフ・オブ・ワーク(PoW)とは?ビットコイン/仮想通貨のコンセンサスアルゴリズムの問題点を初心者にもわかりやすく解説!
ちなみに、プルーフ・オブ・ワーク以外にも「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」と呼ばれるルールが仮想通貨では採用されています。興味のある方は以下で詳しく解説していますので、参考にしていただければと思います。
プルーフ・オブ・ステーク(PoS)とは?特徴や問題点、ステーキングについて初心者にもわかりやすく解説!
ハッシュレートの単位
ハッシュ演算がビットコインにおいてどのような立ち位置になっているか、プルーフ・オブ・ワークを理解することでわかってきたのではないかと思います。
続いて、ハッシュレートの基礎知識であるハッシュレートの単位について紹介します。ハッシュレートは以下のような単位で表されます。
単位 | 演算の回数 |
---|---|
H/s(ハッシュ) | 1秒間に1回 |
KH/s(キロハッシュ) | 1秒間に1000回 |
MH/s(メガハッシュ) | 1秒間に1,000,000(100万)回 |
GH/s(ギガハッシュ) | 1秒間に1,000,000,000(10億)回 |
TH/s(テラハッシュ) | 1秒間に1,000,000,000,000(1兆)回 |
PH/s(ペタハッシュ) | 1秒間に1,000,000,000,000,000(1000兆)回 |
EH/s(エクサハッシュ) | 1秒間に1,000,000,000,000,000,000(100京)回 |
2021年の執筆時点だと、ハッシュレートは80〜120EH/s(80〜120エクサハッシュ) 程度を推移しています。
ハッシュレートと価格の関係
前置きが長くなりましたが、ここからはハッシュレートと価格の関係について解説をしていきます。最初にも述べましたが、結論としてはハッシュレートの上昇は、価格の上昇可能性を示唆しています。なぜそのようになっているかを知ることで、さらなる価格分析が可能になります。
ハッシュレートは、マイナーがビットコインのマイニング(採掘=承認作業)を行うために必要なハッシュ演算の回数、と述べました。価格とハッシュレートの関係について知るためには、ハッシュ演算の回数がどのようなことで増減するかを知らなくてはなりません。
ハッシュ演算の回数、つまりハッシュレートはいくつかの要素によって増減します。
1 マイニング参加者の増減
2 マイニング設備投資の増減
3 ディフィカルティ(難易度)の調整
大きく分けるとこれら3つの要素で増減します。3については後ほど解説するとして、まずは1と2について解説していきます。
マイニング参加者の増減
ハッシュレートはマイニング参加者の増減によって変遷します。もし、マイニング参加者が1人だった場合、そのマイナーは最小限のハッシュ演算の回数(ハッシュレート)でビットコインの承認を行います。そのほうが設備投資も少なくて済みますし、電力消費も最小限で済むため、コスト=最小→報酬受け取り、という式が成り立つからです。
それでは、マイナーが2人に増えた場合はどうなるでしょうか?この時、それぞれのマイナーは相手にハッシュレートで勝たなければ報酬が受け取れなくなってしまいます。ビットコインのプルーフ・オブ・ワークは「最も演算を早く(多く)行なった人が選出される」というルールなので、相手に負けないよう設備投資を行い、早いハッシュ演算ができるよう体制を整えるはずです。そうなるとマイニングするためのハッシュレートは上昇します。
マイナーが3人、4人……と増えて100人になったとすると、競争原理が働くためその分ハッシュレートは上昇することになります。このようにマイナーの数によってハッシュレートは増減することになります。
マイニング設備投資の増減
次に、マイニング設備への投資の増減によってもハッシュレートは変化します。仮に100人のマイナーがいるとき、100人のマイナーが皆同様に10%の設備投資コストを節約したとしたらハッシュレートも下がります。
選出されるのは最もハッシュレートが高い1人だけなので、余計に10%コストをかけてハッシュレートを維持する必要がありません。他のマイナーのハッシュレートの状況に合わせて、全員がハッシュレートを調整することになります。もちろん、他のマイナーの設備状況やハッシュレートの状況をリアルタイムで細かく知ることはできないため、100人中99人のマイナーが10%コスト削減をしたからと言って、残りの1人のマイナーがすぐに10%コスト削減するかと言えばそうではありませんが、長期的には市場原理によってハッシュレートは下がっていくことになります。
ハッシュレートは設備と消費電力から生まれているため、マイニング設備への投資の増減によってハッシュレートも変化するのです。
ハッシュレートと価格の相関性
ここまでお読みいただいた方はもうなんとなくお分かりになると思いますが、ハッシュレートは、「マイナーがかけてもいいと思う設備のコスト」と「報酬であるビットコインの価格(予測)」によって大まかに定められています。
ビットコインのプルーフ・オブ・ワークでは、マイナーはマイニング設備(コンピューター&電力&冷却装置)を物理的に用意しています。そのため、報酬であるビットコインの価格は支払うべきマイニング設備コスト、つまりハッシュレートに密接に関わっているのです。
ビットコインの価格が下がるとハッシュレートは下がる傾向にあります。そしてハッシュレートが上がると、マイナーたちはそれだけマイニング設備に投資をしている=ビットコインの価格が上がってくると予測している(すでに上がっている場合もあります)ということになります。
ここで、2021年のビットコイン価格とハッシュレートの関係を見てみます。
このようにグラフで見てみると、ビットコイン価格とハッシュレートの相関性が高いことがわかります。ハッシュレートが下げ止まってきたらビットコインの価格が底かもしれない、と考える一つの指標になるでしょう。
ディフィカルティ(難易度)調整とは
ただ、一つだけ注意すべきポイントがあります。それは「ディフィカルティ(難易度)調整」と呼ばれるルールです。ディフィカルティ(難易度)調整とは、ビットコインのハッシュレートを左右する調整機能のことで、約2週間に1度行われます。
ビットコインでは、承認者の選出が10分に1度行われるルールになっています。10分間隔で承認者を定めることが、最も全体のバランスを取れるとされているため、このようなルールになっています。ビットコインでは最もハッシュ演算を早く、多く行なった人が承認者となり報酬をもらうことができますが、そのハッシュ演算が早すぎると10分以内に承認者の選出が行われてしまうことがあります。
実はハッシュ演算が誰が一番早く多くしたかは、ビットコインのシステムが自動で出す問題を、マイナーが解くことによって証明されています。話を簡単にするために、「ビットコインのシステムが出す問題」を「13×X=169 素数Xを求めよ」というものだったとしましょう。このとき、マイナーのパソコンは1からXを試していきます。「13×1=13、13×2=26……」と試していき、最も早く答えを出した人が承認者です。答えは13×13=169なので素数Xは13です。もし一回の計算に1分かかる設備を使用していたとしたら13分かかります。しかし、1回の計算に30秒しか掛からなければ6.5分しかかかりません。
最も早く答えを出したマイナーが13分かかった場合、これは10分より多いので、次の問題は「答えが出る時間=10分」に調整するためにもう少しやさしい問題が出ます。例えば「13×X=130 整数Xを求めよ」などに調整されます。答えは13×10=139でX=10なので、10回の計算で済みます。
この問題を最も早く答えたマイナーが7分かかったとします。すると次の問題は「13×X=169 素数Xを求めよ」のように少しまた難しくなります。
この調整こそが「ディフィカルティ(難易度)調整」です。マイナーのハッシュレートが高くなり(つまり演算のパワーが上昇し)、承認者が選出されるのが10分より早くなると難易度が上がり10分に近づくような問題になります。10分より長くなれば難易度は下がり、また10分に近づくような問題になります。
このようなシステムが採用されているため、ハッシュレートもディフィカルティ(難易度)調整に合わせて上下することがあります。ビットコイン価格が下がり、マイナーが長期離脱してしまう可能性をディフィカルティ(難易度)調整によって和らげ、調整後にマイナーの再開&新規参入を促します。逆に言えば大暴落の後はディフィカルティ(難易度)調整まで苦しい相場が続く可能性がある、とも言えるのです。
このようにディフィカルティ(難易度)調整のことを知っておくと、さらに深い価格分析ができるようになります。
まとめ
ハッシュレートの基礎知識、ハッシュレート上昇でビットコインの価格が上昇する示唆になる理由を解説しました。このようなデータから分析を行うことを「オンチェーン分析」と言います。ビットコインのファンダメンタルズ分析とも言えるオンチェーン分析を行い、価格の動向を探りましょう。
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