貨幣の実態から見る仮想通貨の基礎② <最適通貨圏とは>

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仮想通貨を「貨幣」という視点から見る事で考察する事ができます。経済学では「最適通貨圏」という考え方がありそれは国際的にでも、限定された地域ででもどのような通貨が求められているのかという理解を深める為に有効です。

前回記事はこちら⇒貨幣論から見る仮想通貨① <通貨の基本的機能>

 

 

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最適通貨圏とは

最適通貨圏は「単一の共通通貨を利用する事が適する地域」の事で、1999年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・マンデル氏の理論「OCA:Optimum Crrency Area」が代表的です。

 

最適通貨圏に属する地域では共通の単一通貨を用いる事により、活発な経済活動(貿易や投資)が行われるので最適な資源配分が実現し効率化された経済活動が行われるとされます。欧州の共通通貨であるユーロが導入される前の1990年代にこの理論は活発に議論されておりユーロ導入の一因ともなりました。

 

共通で単一通貨を利用する事で為替レートの変動が無くなり、為替に対するリスクが軽減されます。例えば自国通貨高になってしまうと貿易において輸出が制限されてしまう等のリスクが無くなり、経済を安定的に回す事ができるようになります。

このようなメリットがある一方で逆に輸出を増やしたい時に通貨安になるような金融政策を打てなくなります。例えば自国の金利を上げて通貨を外国に購入してもらい価格を下げる(通貨安を招く)事などは共通通貨を用いている為にできません。

 

ヨーロッパで導入されたユーロはヨーロッパが「最適通貨圏」であるとの考えも一因となり導入されました(もちろんそれだけではありません)。このような最適通貨圏という概念を知る事で世界共通通貨である仮想通貨がどのような地域で利用されるべきなのかを考察できます。

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ヨーロッパとユーロ

ヨーロッパで導入された異なる国の単一共通通貨であるユーロですがユーロ導入後、それまでの一国一通貨という時代よりも経済が安定しているかは疑問です。もちろんまだ破たんしたわけではないので断定はできませんが。

最適通貨圏という観点から見るとヨーロッパが最適通貨圏に当たるかどうかは「経済の開放度」が条件となると言われています。つまり共通の通貨を利用するにあたり、異なる経済状況の各国がそれを安定利用するには資本・金融市場の流動性が求められます。

 

A国が経済的に危機に瀕した際に資本がA国に流入する事、労働力・生産力が持て余している隣国から移動する事で安定を取り戻す、という一つの例が挙げられます。

このように経済的な不安定を市場が開放される事で解決する事が共通通貨を利用する場合には求められます。

 

しかし、先に述べたように共通通貨を導入した場合金融政策を打ち出す事はできなくなります。通貨を発行して経済を活性化させる事もできなくなります。ですのでその方法以外で流動性を保つ必要が出てくるのです。

 

ヨーロッパに関して言えば資本・金融市場の流動性は高くないとされています。というより異なる国では流動性が金融政策無しに保たれる事は難しいと考えます。各国ではそれぞれに異なった政策を持っていて、富の配分も独自に行います。その為、仮に失業したとしてもその国では社会保障を行ってくれるので、わざわざ遠くの国へ働きに行く必要は無いケースが多くあります。

資本主義では富の再分配が原則ですのでそのような社会保障を行わない場合は国自体が運営できなくなってしまいます。

 

ヨーロッパでは日本とは異なり陸続きなので労働を求めて他国へ移動する事が容易、且つ文化・生産的背景もそれぞれの国が似ているので容易、といった事もユーロ導入を進める一つの要因となっていましたが現状これは難しい問題として今もなお課題となっています。

 

最適通貨圏ではこのような一時的な経済不安定(非耐性ショック)も単一通貨を利用すれば徐々に改善されていくと言われますが2010年のギリシャ危機などを見ていると各国の安定は各国の努力や経済力によるものとも見れます。

ギリシャ危機については本題とは逸れてしまうので言及しませんが金融政策を行えないギリシャでは財政赤字などで世界を巻き込む経済危機を巻き起こしました。

 

このように共通通貨を利用する事で世界の経済が安定化するかはとても重要な問題で、もし共通通貨を利用する場合は国に依存しなければいけない現代においては、国の経済状況によって国民だけではなく世界的な経済危機になってしまうのです。

 

世界共通の仮想通貨

このように最適通貨圏という概念を見てみると世界共通通貨である仮想通貨を利用する場合、経済の安定はなかなか困難である事が分かります。

仮想通貨が世界で利用されるのには価格の安定が求められます。例えばビットコインを100BTC保有している時に1BTC=100万円だったものが次の日に1BTC=1万円になってしまった場合、生活を営む事ができなくなります。

 

全ての国で、全ての商品をビットコインで購入できたとしても商品(資源)は有限ですので商品を多く生産できる経済大国に小国は勝つことができず国民は困窮してしまいます。つまり格差が広がる事になります。これは国内での経済格差でも同様です。商品を多く生産⇒保有ビットコインの上昇⇒富の再分配問題、となります。再分配は現状で上手くいっていない事は貧困者問題で明らかです。

 

このように世界で共通して利用する場合には為替調整機能を持たないビットコインはヨーロッパで導入されているユーロと同様かそれ以上に(ユーロにはECBという金融政策機関が存在する)一つの経済不安定国の影響を受けやすくなる、且つ格差を広げます。

 

仮想通貨は通貨になるか

仮想通貨(ビットコイン)を世界の通貨として利用するにはこのような理由から少し困難です。仮想通貨が仮に世界の通貨となるのであれば先に述べたように格差を広げてしまいます。格差が広がるという事は暴動・貧困・国の運営にとって問題となり私たちの問題になる為多くの人がそれを防ごうとするでしょう。

 

つまりこのように考えた場合、仮想通貨だけの世界というのは難しく法定通貨との共存は避ける事が出来ません。国という概念が無くなれば別ですがそれも多くの困難が待っています。

 

仮想通貨の最適通貨圏はどこにあるでしょうか。最適通貨圏はインターネット上にあると私は考えます。インターネット上には国が存在しません。物理的な障壁はありません。つまりインターネットで活動する時にそれを促進するのが仮想通貨であると言えます。ただ、現状では高い価格変動率と課税(日本在住の場合。ただし多くの国が課税対象とすると予想)の為それすらもままなりません。それらの問題を解決するにはまだまだ課題が山積みです。

 

インターネット上のお金である仮想通貨はこのような問題を抱えている事が、貨幣の実態から考察する事で見えてきます。

 

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