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ビットコインの取引処理を行う作業をマイニングと言います。マイニングには電力消費が必要で、この電力消費がどのくらいか、またビットコインという決済システムが維持されていく上で課題となるのかを考察します。
マイニングの消費電力とは
マイニングとはビットコインや仮想通貨が稼働していく為の作業の事を言います。(マイニングとは⇒初心者も分かるビットコインのマイニングとは)
取引が処理される事や 新規仮想通貨が発行される為にはマイニングという作業が必要になります。
マイニングを行うには専用設備とそれを動かす為の電力が必要です。コストをかけて行うマイニングはその対価として報酬を受け取る事ができるのでビジネス(報酬ーコスト=利益)として参加する事になります。もし報酬がコストよりも低ければ成立しないのでマイニングを継続する事はできなくなります。(参考:ビットコイン「マイニングの報酬」の仕組み)
そしてビットコインではマイニングで報酬を貰えるのは10分に1名とルールが決められています。その1名に選ばれるには他者よりも高性能な設備(多くの設備)・それを動かす為の電力が必要になります。多くの投資(設備・電力)をかけると報酬を受け取る確立が上昇するルールとなっています。(必ずしも受け取れる訳ではありません。全体の50%のパワーを保有していれば1/2の確立で受け取る事になりますが競争があるので現在最も大きなパワーを持つマイニング団体で全体の約15%です(変動します)。)また、このような多くの設備+電力消費をかけた者が最も優位な立場になるルールをプルーフオブワーク(Proof Of Work)と言います。
10分に1度、報酬受け取り人が決定していきますがこれはずっと継続していきますのでなるべく多くの報酬を受け取る為に常にマイニングの為のコスト、特に電力を消費しなければなりません。
その為この電力消費がビットコインの稼働では欠かせず、普及(価格上昇)と同時に大きくなっていくので経済的な問題である、と考える事ができます。以下では実際にどのくらい電力消費が行われているのか、またそれはビットコインにとって大きな問題になるのかを考察していきます。(ビットコイン消費電力の経済的問題についてはこちらビットコインの経済的浪費とセキュリティ的限界もご参照ください。)
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マイニングの消費電力はどのくらいか
実際マイニングの消費電力はどのくらいなのでしょうか。Digiconomist(https://digiconomist.net/bitcoin-energy-consumption)というサイトの統計によればビットコインのマイニングに使用される年間の消費電力は2017年12月の報告時点では35.77TWh(テラワット 1TWh=1000000000kWh)とされています。
ビットコインのマイニングは単なる稼働の為の電力消費だけでなくそれを利用した時に生じる熱の冷却の為の電力も関係する事や、一極集中で行われている訳ではない事などから正確な数値を算出するのは難しくDigiconomistによって独自に算出されたものなのであくまで目安とした方が良いでしょう。
この35.77TWhという数値は国の消費電力と比べてみると58位のカタール、59位のブルガリアの間に位置すると言います。このようにビットコイン稼働の為の消費電力は一国の消費電力と同様のものになっている事が分かります。
年間CO2排出量
またこれらの消費電力による年間CO2排出量は17,526kt(キロトン 1kt=1000トン)と算出されます。これは世界地球温暖化防止センターの2014年の統計(http://www.jccca.org/chart/chart03_01.html)を利用すれば世界の約0.05%の排出量に当たります。第14位のイタリアでも約1%なのでCO2大国に比べれば大したものではありませんが今後増えていく(普及と同時に増えていく)事を考えれば環境にも影響のある値だと言えます。
つまりビットコインという国の関係していないネットワークシステムでは既に多くの消費電力、そしてCO2排出量が発生している事になります。これは国のように政策を行う事ができる組織によるものではなく、誰も止める事のできない不特定多数の世界中からの参加者によって作られています。
その為すぐにこれを抑える事はできず特に価格上昇と共に消費電力も上昇していく相関関係があるのでビットコインの課題となる可能性があります。価格が上昇するとマイニング報酬も上がる為(報酬がビットコインで支払われる為)に投じる事のできるコストも上昇します。すると全体的に消費電力も増大していく事になります。
他の決済システム
他の決済システムではどのくらいの電力が消費されているかもDigiconomistでは試算しています。Digiconomistによれば一回の取引処理に関してビットコインでは大手クレジット決済システムVISAの約66倍の電力消費が行われているとしています。
VISAでは組織を形成して行っているのでオフィスに使用する消費電力などは算入されていないとしておりますがいかにビットコインの消費エネルギーが増大であるかが分かります。
このようにビットコインがVISAよりも取引の為の電力消費が行われてしまう理由の一つとして取引処理能力の低さが一因として挙げられます。これは様々な解決策が試案されているのであくまで参考の数値となります。(参考:ビットコインの取引処理能力は低い?)
消費電力はビットコインの課題か
このようなビットコインの消費電力が今後ビットコインの普及に課題となる事は大いに考えられます。
なぜならCO2などの排出量が国にとって運営の邪魔になる可能性があるからです。仮にビットコインのマイニングファーム(マイニング施設)が一国に集中した時にその国の排出量は増大する事になります。一国に集中してしまう事があればその国はカタール等の消費電力並の増加を招きます。
マイニングではマイニング設備を分散させるマイニングプールという仕組みがあるので一国に全てが集中する事は考えにくいですがなるべく電気代の安い国で行おうとするのは経済原理で当然の事なので電力が豊富で電気代の安い国に集中する可能性はあります。現に多くのビットコインマイニングは中国で行われています。
ですがCO2排出という環境に影響するものは国際的な問題になっており、政治的にもCO2削減公約を国際的に発表して優位に立とうとする場面も見受けられます。このように今後地球温暖化のような問題が矢面に立たされる場合に国によるマイニングの制限が消費電力という観点から行われる可能性があります。
進む事業者のマイニング参入
日本でもマイニング事業に参入する企業が出てきています。(GMOグループのマイニング開始について)例えばこのような企業が参入する事で国とのつながりは更に出てきます。国に属する企業、どこかの場所を利用しなければならないマイニングという特性上、国の政策には影響されざるを得ません。
最悪の場合ではマイニングの禁止やマイニングによって利用できる電力の規制が行われるかもしれません。そうなればビットコインの取引処理能力やセキュリティが減少する為に価格にも大きく反映される事、利便性の喪失が起きる可能性があります。
ですのでビットコインは価格や取引処理能力の技術的開発というトピックが取りざたされますが実はこのような消費電力問題も大きな課題として残っていると言えるでしょう。
仮想通貨のマイニング
このように問題点を述べてきましたが仮想通貨のマイニング(処理作業)はプルーフオブワークのように消費電力に頼るものだけではありません。プルーフオブステーク(Proof Of Steak)のようなその仮想通貨を多く保有する人が優位に立てるシステムも存在します。
この場合はプルーフオブワークよりも消費電力は必要としないのでこの問題を解決する事になります。もちろんプルーフオブステークも多くの資産を保有する人がより多くの資産を保有する事になる循環が生まれる事などから課題が無い訳ではありません。
ですが、ビットコインのマイニングの消費電力の問題はとても重要です。まだ先の事だと考えますがビットコインが普及していくと価格が上昇し消費電力の問題は必ず表面化します。その時にまだビットコインの有用性がある事や解決の糸口が見つかっている事がビットコインには必要であると思います。
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