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日本時間の2021年6月9日、中央アメリカのエル・サルバドル(El Salvador)で、ビットコインを法定通貨(日本円や米ドルのような国の通貨)として採用するための法案が可決されました。(参考:El Salvador adopts bitcoin as legal tender after passing law)
このニュースの背景や今後について、初心者の方にもわかりやすく解説をしていきます。
エル・サルバドルとは
ビットコインを法定通貨として採用するための法案が提出された、と今回報道されているエル・サルバドル。エル・サルバドルは中央アメリカに位置する小国です。
面積は21,040平方㎢(九州の約半分)で、人口は外務省の統計によれば2018年時点で約664万人となっています(千葉県の人口が約620万人で同程度)。エル・サルバドルは自国通貨は持っておらず、米ドルを国の法定通貨として利用しています。
外務省によれば、1979年から内戦が起き、1992年に終結。その後は、国連による監視のもと和平プロセスが順調に進んでいったとされています。今回ビットコインを法定通貨に採用しようとしているブケレ大統領は、2019年に選挙により選出され就任しています。
※エルサルバドル、データ参照元:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/elsalvador/data.html
※千葉県データ参照元:https://www.pref.chiba.lg.jp/toukei/toukeidata/joujuu/geppou/2021/index.html
報道によれば、ブケレ大統領はビットコインを法定通貨にする方針の法案を提出したとしており、「Strike(ストライク)」というデジタル決済サービス企業と連携して金融インフラの整備を進めていく、としています。
また、可決後90日後に法案は有効となり、ビットコインで納税ができるようになることや、お店ではビットコイン支払いを拒否してはならない、などの文面が盛り込まれたとされています。
なぜビットコインを法定通貨に?
今回の法案が通過したことにより、ビットコインが国の法定通貨になる最初の事例となりました。ビットコインは発行している国や組織が不在の通貨で、特定の国や組織がコントロールすることが難しい世界共通通貨として存在しています。特定の国の景気悪化や通貨安などに価格があまり左右されないとされているため、ビットコインを安全資産として投資家や企業が保有する動きがあります。
また、世界中どこからでも購入できることや、保有するのに銀行口座が必要ないこと、送金も世界中どこへでも行えることなどによっても需要が増えると見込まれ、価格が上昇するのでは、という期待もあります。
つまり、安全資産としてのビットコインを国や国民が利用することで、安心して経済活動を行える、また、保有しているだけで国や国民がビットコイン価格の値上がりの恩恵を受けられ、国が豊かになっていく可能性がある、ということです。
このような背景があり、エル・サルバドルは法定通貨として採用する方向で進めているのではないかと思います。
ビットコインは通貨として使いにくいのでは?
ビットコインは日本では「暗号資産」と法律で定められており、話題になる時も投資先の一つ、という側面が多く、通貨としての機能はあまり取り上げられることはありません。ビットコインの価格が激しく上下すること、決済時間が遅いことなどから「通貨としては使えない」というイメージが日本では広がっています。
確かに日本円は世界的に見ても安定しており、日本円を普段利用している私たちにとって、ビットコインのような価格変動が激しいものを通貨として使うなど、考えられないかもしれません。しかし、世界には経済的にも治安的にも不安定な国がたくさんあります。日本では多くの人が国を信頼していますが、国など信頼できない、という国民がたくさんいる国も多く、その国が発行する通貨よりもビットコインの方が安心して利用できる、というケースもあります。
また、そのような国では銀行口座を持っていない人も多い場合があり、銀行口座不要で利用・貯蓄できるビットコインの利便性は高いでしょう。
エル・サルバドルでは、現在米ドルが国の法定通貨として使われていますが、米ドルもアメリカの金融緩和政策(お札を大量に刷って景気を上向かせるなどの政策)によって、通貨の価値が大幅に下がってしまう恐れがあります。ビットコインも米ドルと同様に国の法定通貨として採用し、一定量のビットコインを国が保有しておくことで、経済を安定させられる、という狙いがあるのかもしれません。
ビットコインの決済は遅い?
ビットコインの決済は通常、最低でも10分程度はかかる設計になっています。より安全性を確保しようと思えば、決済時間に60分は必要です。ビットコインを通貨として考えた場合、毎回の決済に60分もかけていられません。120円の缶ジュースを買うのに1時間かけていたら、通貨として成り立ちません。
ただ、この解決策は様々なものがあります。例えば現在、米国の「Paypal(ペイパル)」という企業はスマホでクレジットカードなどで決済するのと同様に、ビットコインなどの仮想通貨決済も受け付け、ユーザーが長い時間待たなくてもビットコインで商品を購入できるサービスをスタートしています。
今回の報道で挙げられている「Strike(ストライク)」という企業が行う決済サービスも、ペイパルと同じようにビットコイン決済をネット上で行うサービスを提供しています。今後も、ビットコインをスムーズにユーザーが利用できるようなサービス、そして金融インフラをエル・サルバドルと協力しながらさらに整備していく可能性があるでしょう。
またビットコイン自体にも、決済スピードを早めるとともに、手数料を安くする機能を実装する開発は数年前から常に進められています。「Lightning Network(ライトニング・ネットワーク)」と呼ばれる技術がその一例で、今年中にその技術をより実現可能にするための「Taproot(タップルート)」という実装がつく目安がついています。
参考:ビットコインがTaprootのテストを開始。アップデートで一歩ずつ進歩していく
このように、「ビットコイン決済は不便」というイメージはいずれ払拭されます。エル・サルバドルでは在米で働き、家族への送金をしている人の送金額が同国GDPの23%となっているとされています(先述の経産省データ参照)。ビットコインの送金が今後の開発で早く、そして上記のLightning Networkを使えば手数料も安くなるので、この送金が米ドルからビットコインになり、エル・サルバドルの人たちの利便性が向上する可能性があるでしょう。
もし、エル・サルバドルでビットコインが実際に法定通貨として利用され、上手く機能すれば、それが前例となり、自国通貨を持たない国や小国が、ビットコインを法定通貨として採用する動きが増えるかもしれません。
法定通貨はビットコインでいい?
ただし、自国で通貨を持つ国や大国は、ビットコインを法定通貨にすることは非常に困難です。自国で通貨を持つ国や、EUなどは通貨の発行量を増やしたり減らしたりする金融政策を行い、景気をコントロールしているからです。
ビットコインは発行量がプログラムであらかじめ決まっているため、このような金融政策を行い発行量を増減させて景気をコントロールすることは困難です。
また、国にとって通貨発行という権利は国民を統制する上で非常に協力な武器になるので、容易に法定通貨をビットコインにするわけにはいきません。というよりも非常に可能性としては低いのが現状です。
中国政府はビットコインに対し、規制を行い続けています(参考:2021/5/19の仮想通貨暴落と今後について。中国の規制と業界の動向)。ビットコインが法定通貨をなぎ倒していくストーリーは、なかなか進まないでしょう。エル・サルバドルにしても、経済的にアメリカには一定程度依存しなければならないことを考えると(輸出入ともに第一位相手国はアメリカ(先述の経産省データ参照))、結果的には米ドルの補完的存在としてのビットコイン、という位置付けとなるのが現実的だと思われます。
そうなった場合には、他の国がどこまで追従してくるかは未知数です。
ビットコインの価格についても、エル・サルバドルのGDPでは全国民がビットコインを保有したとしても価格を押し上げるほどの金額ではないこともあり、今回の報道だけでは価格に大きな変化は起きていません。
ビットコインにとってビッグなニュースではありますが、まだまだビットコインが世の中に変化を起こし、人々の生活を大きく変えていく上では多くのマイルストーンが残っているでしょう。
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