改悪?改正された暗号資産の自主規制、トラベルルールを初心者にもわかりやすく解説!

 

2022年2月10日、日本暗号資産取引業協会から暗号資産送金ルールの改正案が発表されました。

この改正についてネット上では「史上最悪のルール改悪だ」という意見も多く、暗号資産界隈を賑わせています。

3月1日には当改正案に関するパブリックコメント募集も経た上で、一般顧客向けにその内容を周知する案内も発表されました。

このページでは、

  • 今回の送金ルール改正の内容と目的は何なのか
  • 改正によりわたしたち一般ユーザーにはどのような影響があるのか
  • 改悪という声も多いが、本当にそうなのか

などの点について、2022年3月1日現在で公表されている情報に基づいて解説していきます。

GMOコイン

 

日本暗号資産取引業協会とは?

出典:https://jvcea.or.jp/

今回の改正案を公表したのは「日本暗号資産取引業協会(通称:JVCEA)」です。日本暗号資産取引業協会は、日本の暗号資産業界の健全な発展を目的として設立された自主規制団体です。

日本暗号資産取引業協会には、以下のような会員がいます。

  • 株式会社bitFlyer
  • QUOINE株式会社
  • ビットバンク株式会社
  • GMOコイン株式会社
  • フォビジャパン株式会社
  • BTCボックス株式会社
  • 株式会社ビットポイントジャパン
  • 株式会社DMM Bitcoin
  • SBI VCトレード株式会社
  • コインチェック株式会社
  • 楽天ウォレット株式会社

日本の大手暗号資産取引所から、様々な暗号資産関連企業が名を連ねています。つまり、今回の自主規制改正はほぼほとんどのユーザーにとって影響があるものとなります。

国内で暗号資産交換業を行う場合は、必ず協会の会員になる必要があります。この「会員」という言葉は勘違いしやすいので最初に説明しておきます。

日本暗号資産取引業協会から公表されている文書の中には「会員」という言葉がありますが、これはCoincheckやbitFlyerなどの暗号資産取引所のことを指します。

会員という言葉のイメージから、普段これらの暗号資産取引所を利用しているわたしたち自身が会員なのかなと思ってしまいそうですが、それは違います。

協会に属している暗号資産取引所自体が会員であることを認識した上で協会の文書を読むと、理解がしやすくなります。

 

ルール改正の内容

今回の改正案は暗号資産の送金時のルールに関するものです。

内容を一言で表すと「送金時に受取先の個人情報の入力が必要になる」ということになります。ずばり、手間が増えます。

なぜわざわざそのような手間を増やすのでしょうか?改正内容とともに、この改正の背景と目的も確認していきましょう。

 

FATFのトラベルルール

出典:https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/202203-travel_rule.pdf

今回の改正は、FATF(金融活動作業部会)のトラベルルールを遵守するために日本暗号資産取引業協会が適用したルールという位置づけになります。

まずは「FATF」と「トラベルルール」について説明します。

FATFは1989年に発足した国際組織で、マネー・ロンダリングやテロ資金対策のためのルールを作っています。

そのFATFが、暗号資産の取扱業者に対して遵守するように求めている国際的なルールがトラベルルールです。

そして今回、日本暗号資産取引業協会から出ている改正案は、このトラベルルールを守るための取引業者の自主規制案ということになります。

 

改正の具体的な内容は?

それでは、3月1日に公表された「一般顧客向け周知文」の内容を参考にしながら改正の内容を解説します。

周知文の内容をそのまま引用してもわかりにくい箇所があるため、ここでは以下のような取引を想定して話を進めましょう。

鈴木さん(送付依頼人)が、Coincheck(送付側会員)の自分の口座からbitFlyer(受取側会員)の自分の口座にBTCを送る。自分の口座に送るため、鈴木さんは(受取人)でもある。

この前提で、鈴木さんの視点で周知文の内容を見ていきます。

鈴木さんはCoincheckからBTCを送るにあたって、次のことをしなければなりません。

  1. 送付依頼人(鈴木さん)情報の入力【氏名、住所】
  2. 受取人(鈴木さん)情報の入力【氏名、暗号資産アドレス、住所】
  3. 受取側暗号資産交換業者の有無。ある場合はその名称(ここではbitFlyer)
  4. 取引目的

ルール適用は2022年4月1日からですが、このうち2の住所の部分と4については適用は10月1日からの予定です。

1については、そもそもCoincheckを利用している時点で情報をCoincheck側に提供しています。

しかし、2〜4については従来、取引所の暗号資産送金時には入力が不要なものでした。

暗号資産を自分の口座からどこかに送金したことがある方ならわかると思いますが、暗号資産の送金時は送り先の「送金先アドレス」と「送金枚数」さえあれば送ることが出来ました。

取引所の送金画面(出典:https://bitflyer.com/ja-jp/ex/Home)

これが、今回の改正で受取人側の情報も入力する手間が増えるということです。

上記の例では受取人も鈴木さん自身ですが、他の人に送る場合はその人(あるいは組織)の情報を入力する必要があり、これは極めて面倒な話になってきます。

 

入力した情報はどのように扱われるのか?

送金依頼を受けた暗号資産取引業者(上の例ではCoincheck)は受取側の業者(bitFlyer)に、鈴木さんが入力した情報の一部を通知する必要があります。

これにより、暗号資産取引業者間で鈴木さんの情報が共有されることになります。

ただしこの情報を通知するルールは、10月1日まではすべての取引に適用されるわけではありません。 ①受取人と送付依頼人が同一、②受取側が国内の業者、③送付するのが BTC または ETH、④日本円で 10 万円を超える額、のすべてを満たした取引のみが通知対象になります。

また、個人のウォレットへの送金の場合は情報の入力はおそらく同様に求められますが、その情報を通知する先がないため、その送金は通知対象にはならないようです。(さらなる詳細は協会の公式情報をご覧いただくといいでしょう)

 

ルール改正によって見込める効果

今回のルール改正により、

  • 暗号資産取引に関わる人物の情報を業者間で共有することにより、個人情報の照合をしやすくする
  • その結果、不正が疑われる取引において、関係する人物の特定がしやすくなる
  • マネー・ロンダリング等に関わる資金、あるいはハッキング被害にあった暗号資産の特定がしやすくなる

といった効果があると想定されます。

 

本当に「改悪」なのか

今回のルール改正が「改悪」と言われる理由は様々です。

まずご覧いただいた通り、わたしたちユーザーにとってはかなり手間が増えます。自分の情報を入力するだけならまだしも、他者に送金するときにいちいち情報を入力するのは想像するだけで煩わしいですよね。

また、暗号資産取引業者が情報を流出してしまうリスクもあります。そして、そのような流出が起こったときの影響はこれまで以上に大きくなります。

これまで暗号資産は匿名で取引が可能だったため、仮に情報が流出したとしても個人の特定は容易ではありませんでした。

しかし、今後は取引情報に氏名や住所までが紐付いてくるわけですから、高額な取引をしている人は犯罪者から目をつけられ、自宅を襲われる可能性さえあります。

さらに、取引所を経由した取引であれば個人情報の照合がなされて犯罪の抑止につながる可能性はありますが、暗号資産の場合は他の金融資産と異なり、そもそも個人ウォレットに送ることが出来てしまいます。

個人ウォレットへ一度送ってしまえば、本当に自分が送りたい宛先に直接送ることができてしまうので、犯罪抑止の効果は限定的(ザル)とも言われています。

このように今ひとつ利点の見えない、むしろ手間とリスクばかりが増えたように見受けられる今回の改正ですが、本当に「改悪」なのでしょうか?

わたしは「必ずしも改悪とは言えない。むしろ暗号資産がより一般層にも普及していくためには、今回のような策は一定必要なことである」と考えます。

個人的にはもちろん手間が増えるのでこの改正はかなりイヤだなと思っています。

しかし、暗号資産を含めWeb3という新しい時代の到来が予感される中、今は暗号資産に馴染み・関心がない人たちにもこの世界に入ってきてもらうこと、そして暗号資産やWeb3に触れてもらうことは、業界の発展のためには必須だと考えます。

その時、今すでに暗号資産やNFTに触れている人に比べると金融・ITリテラシーがおそらく高くはないであろう人たちでも安心して、安全に暗号資産に触れていくには、今回の改正のようなルール構築はある程度の意味をなすはずです。

すでにこの世界にどっぷり使っている側の目線のみならず、まだ暗号資産を買ったことさえない人たちの目線を持って、今回の改正を捉え直してみてはいかがでしょうか。

 

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