なぜビットコインは環境に悪いのか。マスク氏の騒動から考える非中央集権の「合意」とは

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昨日、テスラ社のビットコイン決済停止により荒れた仮想通貨相場。いつかは解決しなければならない「ビットコインの環境問題」議論に少し目が向けられたことは仮想通貨の未来にとってプラスだったのではないでしょうか。

参考:イーロンマスク氏とテスラ社によるビットコイン・ドージコイン騒動の顛末と今後の考察

ただ、そこで初心者の方もぜひ知っておくべきことが「ビットコインがなぜ環境に悪いシステムを採用しているのか」ということ。事実、仮想通貨の中にはビットコインよりも消費電力の少ないものが存在しています。ならビットコインもそうすれば良い、という簡単な話ではないのです。

そのあたりについて、仮想通貨初心者の方にもわかりやすく解説をしていきます。

 

ビットコインの環境問題

ビットコインが環境に悪い(電力消費が多い)と言われる理由は、そのシステムにあります。そのシステムとはどのようなものか、以下で簡単に説明します。

ビットコインは管理する企業や国がいないため、みんなで管理を行っています。みんなで管理を行っていても、必ず決定は必要。というのも、「Aさんが1ビットコイン(BTC)を持っています」とビットコインシステムの中のデータに仮に記載されていたとしても、「これは本当です」や「これは嘘です」という決定(証明)を必ずしなければシステムとして成り立たないからです。

この決定がなければ誰かが嘘をついて「私は500BTC持っていますよー」と言い出しても、「それは嘘だ」と証明することはできず、不正があちこちでまかり通ってしまいます。

そこで、その決定をする人をビットコインでは「一番電力消費をした人」というルールにしています。(少し厳密に言えば「一番コンピューターで計算を多くした人」が決定できるルール)

今の世の中では電力を消費しようと思えばお金がかかります。つまり一番お金をかけてビットコインに貢献した人が決定できる、というルールです。しかも決定できた人には報酬(ビットコイン)が与えられるシステムなので、皆ビットコイン欲しさに誰が一番電力消費できるか競争をします。そうなれば必然的に参加者が増えれば増えるほど電力消費量は上がってしまいます。市場の原理です。

簡単に言えば、これがビットコインが電力消費をたくさんしてしまう理由です。

以下でこのシステムについて詳しく解説しています。

プルーフ・オブ・ワーク(PoW)とは?ビットコイン/仮想通貨のコンセンサスアルゴリズムの問題点を初心者にもわかりやすく解説!

 

ビットコインより環境に優しい仮想通貨

では、ビットコインより環境に優しい仮想通貨はある?と疑問に思うことでしょう。もちろん、すでに存在しています。例えばリップル(XRP)、リップルはビットコインとは異なるシステムを採用しています。リップルは不特定多数の人たちが管理しているわけではありません。そのため、ビットコインのような競争原理を使って運営しなくて良いのです。だから電力もそこまで消費しません。

また、ビットコインの次に有名なイーサリアム。こちらは現段階ではビットコインと同様のシステムを採用していますが、今後もっと環境に優しいシステムに変更されます。少し具体的に言うと、イーサリアムシステム内通貨のイーサ(ETH)を多く持っている人たちで決定を行う、というもの。

こう聞けば、ビットコインはやっぱり環境に悪い!使うのはやめた方が良い!となりそうですが、もちろんそんな単純な話ではありません。

ビットコインがこのシステムを採用しているのには理由があるのです。色々な理由がありますが、その一つには「合意方法」(つまり正誤の「決定方法」)としてビットコインのようなシステムは、他にはない良さがあります。

例えば、先ほど述べたリップルのようなシステムの場合、消費電力は少なかったとしても特定の管理者が正誤を決めるのが「最良」とは言いきれません。今の銀行システムでも同様のことが言えますが、「この人が1000万円持っているよ」と通帳に銀行(特定の管理者)が記載すれば、それが不正であってもまかり通る、ということになります。国が通貨を発行する時も、国(や発行権限を持つ人)が通貨を発行すると決めればそれが「正しいこと」となります。発行しすぎて多くの人が困ることになっても、それはシステム上「正しく行ったこと」です。果たしてこれが最良のシステムと考えるでしょうか?

また、イーサリアムで検討されている「多く通貨を保有量している人によって決定されるシステム」も万能ではありません。いくつか問題点はありますが、セキュリティ面においてビットコインのようなシステムよりも劣っていると言われています。(イーサリアムはそれも解決するべく開発が行われています)

セキュリティを保ちつつ、特定の管理者がいなくても不正が防げる決定システム。これを可能にしているのが、ビットコインの電力消費をともなった決定システムです。つまり、電力消費というデメリットは、他のメリットを生かすことになっているのです。

 

合意についてビットコインが出した一つの答え

このように、「ビットコインの環境問題」を掘り下げていくと、実は多くの人が関わる組織の「決定方法」「合意方法」について出した一つの答えでもあるのです。経済インセンティブさえあれば、市場原理を持ち込めば、リーダーがいなくても、権力者がいなくても、不正のないシステムが作れることをビットコインは示しています。

もちろん、「電力消費が多いのは良いこと」というわけではないのでその点については議論する必要があります。しかし、国の政策に従うしかない、トップの言うことに従うしかない、といった中央集権型のシステムに一石を投じ、そのシステムの価値が今や時価総額約100兆円に達しているのです。

インターネットが発達し、ブロックチェーンというこの世をまた一段変えようとしている技術が誕生した今、ビットコインのなし得ていることを正しく知り、環境にも優しく、人にも優しいシステムのあり方を議論する時が来ているのかもしれません。

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