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2022年5月中旬現在、暗号資産市場は大きな下落局面を迎えています。
時価総額が小さな、いわゆる「草コイン」はもとより、ビットコインやイーサリアムなど主要銘柄までもが大きく値崩れをしています。
本ページの執筆時点では、直近7日間の値動きがマイナス20〜30%、中には50%以上も値を下げている銘柄も珍しくありません。
その中でも極めて大きな暴落を見せている暗号資産があります。それがTerra(LUNA)とTerraUSD(UST)です。
USTは、1UST=1米ドルとなるように価格が調整されるステーブルコインの1種です。そして、LUNAはUSTの価格を1ドルに維持するために使われる暗号資産です。
今回、この2つの通貨が揃って暴落しました。特にLUNAは1LUNA=約1万円の水準から一気に価格が下がり、本ページの執筆時点では1LUNA=約0.003円まで暴落しています。わずか数日で「330万分の1」にまで価値が下がったという状況です。
現在、暗号資産取引所BinanceでもLUNA・USTはいずれもBUSDの除く全ての通貨ペアの取引が廃止されています。
このLUNA・USTショックがなぜ起こったのか、そもそもLUNAとUSTはどのような暗号資産なのか、現時点の最新情報を交えて解説します。
目次
ステーブルコインについて
今回起きたことをシンプルに言えば、
- 1ドルと同じ価値を持つはずのステーブルコインUSTが暴落した
- USTの価格維持に利用されるLUNAが暴落した
という2点です。そして、これらの原因を理解するには、ステーブルコイン自体の理解が不可欠です。
そこでまずはステーブルコインの基礎知識について解説します。
ステーブルコインとは何か?
ステーブルコインはその名の通り、「価値が安定している暗号資産」です。代表的なものにはUSDT、USDC、DAIなどがあります。
暗号資産は、ドルや円などの法定通貨に比べて利便性で勝る部分がある反面、値動きの幅が大きいことが重大なデメリットとして存在します。
「暗号資産の利便性はそのままに、価格変動が少ない通貨があったら便利なのではないか?」
こういったニーズを背景に生まれたのが、ステーブルコインです。ステーブルコインの機能は多くの暗号資産と変わりませんが、一方で価格は他の安定しています。
ステーブルコインの価格は法定通貨と連動しているものが多く、先ほど挙げたUSDT、USDC、DAIはいずれも1枚の価格が1米ドルと等しくなるように維持されています。同様に、日本円に連動したステーブルコインにはJPYCなどがあります。
※ここでは、ステーブルコインを「価値が安定している暗号資産」として解説していますが、ステーブルコインを「価格が他の資産と固定されている暗号資産」と定義する場合もあります。例えば、米ドルであっても価格は上下するため、これら二つの定義を合わせて「他の資産に連動し、価値・価格が安定している暗号資産」と定義しても理解しやすいかもしれません。
ステーブルコインの種類
ステーブルコインは、価格を維持する手法によって大きく4つに分類されます。
- 法定通貨担保型
- 暗号資産担保型
- コモディティ型
- 無担保型
法定通貨担保型は、発行済みのステーブルコインと同額の法定通貨によって価値が裏付けされています。
代表的なものには、USDTがあります。USDTを発行しているのは米テザー社です。
仮にテザー社が100USDTを発行している場合、テザー社は100USDTの価値の裏付けとして実際に100米ドルを保有している必要があります。発行体が裏付け資産を持っているからこそ、ステーブルコインにもそれと同じ価格分の信用が生まれる仕組みです。
暗号資産担保型は、法定通貨担保型に比べて担保となる暗号資産自体の価格は不安定です。そのため、暗号資産担保型のステーブルコインはあまり種類は多くありません。
代表的なものにDAIがあります。DAIも1米ドルに価格連動する通貨であり、イーサリアム(ETH)が担保になっています。イーサリアムは法定通貨よりも価格変動が激しい通貨ですが、イーサリアムにはスマートコントラクトの機能があります。これにより、世界中の人々で分散的に価値を担保をしている点が特徴的です。
コモディティ型は、金や原油などの商品によって価値が担保されています。
そして、今回価格が暴落したUSTが該当するのが無担保型です。無担保型は法定通貨や暗号資産などを担保資産とせず、アルゴリズムによって価値が保たれています。
アルゴリズムで自動的に通貨の供給量を調整し価格を維持するため、アルゴリズム型とも呼ばれます。
LUNAとUSTの関係
USTは、今ご紹介した通りアルゴリズムによって価格が維持されている無担保型のステーブルコインです。そしてLUNAは、アルゴリズムの中でUSTの価格維持に使われている暗号資産です。ここからは、LUNAを用いてUSTの価格を維持しているアルゴリズムについて解説します。
1UST=1ドル分のLUNA
USTの価格安定のアルゴリズムには、「UST1枚は1ドル分のLUNAと必ず交換できる」という大前提があります。
テラステーションと呼ばれる分散型システムにて、1USTを1ドル分のLUNAと交換できることが約束されています。
例えば、1000USTをテラステーションに投入すれば、1000ドル分のLUNAを手にすることができます。これは、必ずしも「1000LUNA」とは限らない点に注意が必要です。受け取ることができるのはあくまで「1000ドル相当の」LUNAです。
逆に、1ドル分のLUNAも必ず1USTに交換できます。ここでも、1LUNAが1USTに交換できるわけではなく、「1ドル相当の」LUNAが1USTと交換できる点は覚えておいてください。
USTの価格が上下した際に働く仕組み
USTの価格が上下した時に働く価格調整のメカニズムを、具体例で解説します。
例えば、あなたが現金100ドルを持っているとします。
USTは通常1UST=1ドルですが、USTの市場価格が何らかの原因で上昇して1UST=2ドルになったとします。つまり、USTの価格は2倍になっています。
この時、あなたは以下のような行動を取ることで儲けが得られます。
- 100ドルで「100ドル分のLUNA」を買う。
- 100ドル分のLUNAを100USTに両替する。
- 100USTを市場で売却し、200ドルを得る。
すでに述べた「UST1枚は1ドル分のLUNAと必ず交換できる」というルールと、1UST=2ドルの市場価格の下では、このような動きが発生します。
この時、両替の段階ではLUNAがburn(焼却)され、USTが新規に発行されます。つまりLUNAの流通量が減少し、USTの流通量は増えます。
通貨は流通枚数が増えると価格が下がります。この例では、本来1ドルであるべきUSTが2ドルになっていましたが、上記のようにUSTの流通量が増えることで価格は2ドルから下落し1ドルに近づいていきます。
次に、再度あなたが現金100ドルを持っているとし、一方でUSTの市場価格が下落して1UST=0.5ドル、つまり通常の半分の価値しかなくなったと仮定します。
この時、あなたは以下のような行動を取ることで儲けが得られます。
- 100ドルで200USTを買う。
- 200USTを「200ドル分のLUNA」に両替する。
- 「200ドル分のLUNA」を市場で売却し、200ドルを得る。
このケースでは両替時にUSTがburnされ、LUNAが新規発行されます。したがってUSTは発行量が減って希少価値が高まり、価格上昇の圧力が生まれます。1UST=0.5ドルから1ドルに近づいていきます。
このように、USTの価格維持のアルゴリズムは「LUNAとUSTを固定レートで交換できる」機能を用意し、両替元の通貨をburn、両替先の通貨を新規発行することで流通量を調整し、1UST=1ドルに近づける仕組みになっています。
USTが暴落したら何が起こるか?
このメカニズムを理解すると、USTが暴落した時に何が起こるかも理解できます。
USTが暴落(先ほどの1UST=0.5ドルの例をイメージしてください)すると、USTを買い、LUNAに両替する動きが増えます。
その結果、LUNAの流通量は増え、最終的にはLUNAを現物資産(ドル)に替える流れが発生するため、LUNA自体に価格下落の圧力が働きます。つまり、USTの価格を維持するためにLUNAが代わりに暴落するようなイメージです。
今回の暴落の原因は?
USTの暴落が、結果的にLUNAの暴落にまで派生することは理解できたでしょうか。
次に、今回実際にUST、LUNAともに暴落が発生してしまった原因について解説します。
Terraのブロックチェーンに構築されたDeFiプロジェクトの1つに、「Anchor(アンカー)」と呼ばれるものがあります。Anchorは最大19.5%の高い利回りを提供していました。
ところが、5月6日から9日にかけて、Anchorの預り金であるUSTが約7,000億円も引き出されました。
またTerraの運営も、ブロックチェーン上の別のサービスから200億円相当のUSTを引き出していました。
これによってUSTの信用リスクが一気に高まり、まずはUSTの価格が暴落。そしてアルゴリズム通りに価格維持を試みたLUNAも引きずられて大暴落しました。この裏には、特定の大口ウォレットがUSTの大量売却を行ったことも確認されており、組織的な相場操縦であった可能性も疑われています。
このように、担保資産がないアルゴリズム型のステーブルコインは、投資家が価格の安定性を信頼しなくなった瞬間、価格維持のメカニズムが崩壊する可能性があり、以前からその脆弱性は指摘されてきました。
他のステーブルコインは大丈夫なのか?
価格が安定しているはずのステーブルコインが暴落したことで、USDTやUSDC、DAIなどの他のステーブルコインも暴落する可能性があるのではと不安になる方もいるでしょう。
しかし今回のUSTの件は、あくまでUSTが無担保型のステーブルコインであることが原因で発生しています。法定通貨や暗号資産、コモディティなどの実在する資産を担保とするステーブルコインでは、同様の理由で暴落が起きることは考えにくいはずです。
ところが、他のステーブルコインも暴落の可能性が一切ないとは言い切れません。担保型のステーブルコインはあくまで担保資産が存在することで信用が保たれています。もしステーブルコインの発行体が、価値担保に必要な量の裏付け資産を保有していないことが判明すれば、ステーブルコイン自体の信用も失われ、価値は下がるかも知れません。
例えばUSDTを発行しているテザー社は、発行済のUSDTの担保となる米ドルを保有していないのではないかと疑惑を持たれたことがあります。これに対しテザー社は裏付け資産が存在する報告書を公表しましたが、2022年現在でも完全には疑惑は解消していません。
まとめ
2022年5月14日執筆時点で判明しているLUNAとUSTの現状について解説しました。
ステーブルコインは価格が一定に保たれているため、暗号資産投資において資金の一時避難先として利用されるなど、重要な役割を果たしています。
しかし担保の形式次第では、今回のUST、そして付随するLUNAのような暴落も起こりえます。
LUNAとUSTの暴落を通じて、ステーブルコインに関する正しい知識を身に着け、ご自身の暗号資産投資に活かしていただければと思います。
TOP画像:https://www.terra.money/
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