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GAFAをはじめとする巨大テクノロジー企業が世界の覇権を握っている今、わたしたちが日常で触れるあらゆるデータは、これらの企業による中央集権的な管理下に置かれています。
企業が提供するオンラインストレージやクラウドストレージと呼ばれるデータ保存の仕組みは高い利便性を提供しているものの、サーバーへのハッキングや災害などで物理的に破損してしまうリスク、あるいは管理側が意図的に閲覧・改ざんしたり、悪用するリスクもあります。
このWeb2.0的なデータ管理を問題視して生まれたのが分散型ストレージです。
分散型ストレージを代表するものとして本ページでは以下の3つを取り扱います。
- Filecoin(IPFS)
- Arweave
- ICP(DFINITY)
最初に分散型ストレージの概念、及び上記3つのプロジェクトについて簡単に解説します。その後、これらの3つが持つ特徴の中で、比較することにより特に理解が深まる部分にスポットを当てて説明します。
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目次
分散型ストレージとは?
分散型ストレージは、特定の企業や組織などの管理者が一括してデータを管理するのではなく、ネットワーク参加者のパソコンやスマホの空き容量を利用するなどして分散化されたネットワークでデータを保存する仕組みです。
分散型ストレージには、企業が管理していた「クラウドストレージ」と呼ばれる仕組みと比べて、以下のようなメリットがあります。
- データが1箇所に集まっていないため、ハッキングや物理的理由によるデータ消失のリスクが低い
- 管理者によるデータの恣意的な閲覧、改ざん、悪用のリスクが低い
- 世界中のネットワーク参加者のデバイスの空き容量を利用してデータを保存するため、企業が負担するデータの維持管理費を抑制できる可能性がある
分散型ストレージの種類によって細部に違いはあるものの、総じて上記のような機能を提供しており、Web2.0時代のデータ保存のあり方からの脱却を目指したものになっています。
それでは、3つの代表的な分散型ストレージについて見ていきましょう。
Filecoin(ファイルコイン)
Filecoinは、米Protocol Labs社が開発した分散型ストレージサービスです。本ページでは、比較をわかりやすくするため、システムの名称としてのIPFS(InterPlanetary File System)ではなく、システム上でノードに対して支払われるトークンであるFilecoin(FIL|ファイルコイン)の名称を用います。
IPFSは、従来からインターネットで利用されている通信規格である「HTTP(Hypertext Transfer Protocol)」の問題点を解決しうるシステムです。
HTTPは「ロケーション指向型」のネットワークです。HTTPでデータにアクセスしようとした場合、「http://〜」というURLを指定します。このURLはデータが存在しているサーバ、及びサーバ内での場所を指定しています。
コンテンツの内容は重要ではなく、あくまで保管場所(ロケーション)を指向した仕組みになっています。
しかしロケーション指向型では、特定の管理者(サーバ)への依存が強いため、管理者による不正やデータの消失などの懸念があります。
そこでIPFSは「コンテンツ指向型」を採用しています。
IPFSではコンテンツごとに識別IDが割り当てられています。データを呼び出したいときはネットワーク全体へコンテンツの識別IDを通知し、そのIDが割り当てられたデータを持っていないかを照会します。
ネットワーク上のノードのうち、どれか1つでもIDが合致するデータを持っているノードがあれば、そのノードからデータを呼び出すことができます。
また、データが改ざんされている場合は識別IDが合致しないため、これをもって「改ざん不可能性」を実現しています。
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Arweave(アーウィーブ)
Arweave(アーウィーブ)は英国のスタートアップが開発を進める分散型ストレージネットワークです。
Arweaveネットワーク上にPermaweb(パーマウェブ)と呼ばれるレイヤーがあり、データはこの層に保存されます。「Permanent(永久の)+Web」の名の通り、この層に保存されるアプリケーションや画像などのデータは永続的に保存され、他者が意図的に変更したり、消滅させたりすることはできません。
Arweaveにコンテンツを保存したいユーザーはArweaveのトークン「AR」を用いて、永続的なデータ保管を前提に前払いで一度だけ料金を支払うことで利用できます。
Arweaveは過去のストレージ価格の動きをもとに、将来にわたってデータ保管のコストは低下していくと考えています。そのため、最初に多めの代金を受け取っておくことで、将来的には下落していくであろう保管コストはまかないきれると見積もっています。
Arweaveの試算では、1GB=約3.3ドルのコストで「最低200年間」はデータを保管できるとしています。※価格は現在値(2022年7月時点)です。独自トークンARの価格変動にも影響されます。(参照:https://arweavefees.com/)
有限ではあるものの、コンピューターの歴史と人間の寿命を考えれば、ほぼ永続的だと言っても差し支えない長さです。
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ICP(Internet Computer|インターネットコンピューター)
ICPは容量無制限、速度はウェブと同等の速度で動作するブロックチェーンプロジェクトです。スイスのチューリッヒに本拠地を置く非営利科学研究組織、DFINITY財団によって立ち上げられました。ビットコイン、イーサリアムに次ぐ3番目のブロックチェーンとも呼ばれ、期待を集めています。
ICPでは既存のブロックチェーンと異なる「Network Nervous System(NNS)」と呼ばれる独自のネットワークを構築しており、これによりGoogleやAmazonが提供するサーバーを利用することなく、非中央集権的なネットワークを実現できています。
NNSを使えば、AWSのようなサービスを使うことなくICP上でWebサイトなどを構築できます。
また、ICPはわたしたちが普段使っているインターネットと同等の速度でスマートコントラクトが実行されます。
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ICPは「Motoko(モトコ)」と呼ばれる開発用プログラミング言語も提供しています。MotokoはICPに最適化された言語であり、一般的なプログラミング言語に精通している人にはとてもわかりやすい言語になっています。
人気動画アプリ「TikTok」は約1,500万行のコードで動いていますが、これをICP上で開発すると1,000行以下のコードで作れるとも言われています。
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3者の特徴の比較
それでは、これら分散型ストレージの特徴をいくつかの視点から比較してみましょう。
〜比較表〜
Filecoin | Arweave | ICP | |
コスト | ◎ | ◯ | △ |
保存期間 | △ | ◎ | ◯ |
計算能力 | △ | △ | ◎ |
利用コスト
ICPの容量あたりの単価は高めです。ブロックチェーンの中では割安ではあるものの、ICPが稼働しているコンピューターは計算能力が高くて高性能であるため、コストもかかります。
この点、IPFS(Filecoin)とAeweaveは計算を主としたネットワークではなく、静的なものを取り扱うプロトコルであることなどからコストを抑えることができます。
なお、具体的な価格で言うと、できることがそれぞれ異なるため一概に比較することはできませんが1GBのデータを保存するためにはICPは年間約5.5ドル(参照:https://dfinity.org/)、Filecoinは年間約0.0000018ドル(現在値。GiB表示なので多少の誤差があります。参照:https://file.app/)、と言われています。
Arweaveは既に述べましたが、1GB=約3.3ドルのコストで200年間保存、なので単純計算ですが年間約0.016ドルというコストになり、理論上はFilecoinに軍配が上がります。
ちなみに、AmazonのAWSは約0.01ドルでサービス提供されているとしています。(現在値。GiB表示なので多少の誤差があります。参照:https://file.app/)
データ保存の期間とインセンティブ
ここではIPFS(Filecoin)とArweaveを比較します。
IPFSはノードの空き容量を利用してデータの保存をしますが、ノード側にしてみれば、他人のデータをわざわざ保管するインセンティブがありませんでした。
データの保存にはコストがかかるため、理由もなく他人のデータを保管する必要はありません。
そこで生み出されたのがFilecoin(FIL)です。Filecoinを報酬としてノードに支払うことで、一定期間データを保管し続けることを確約できます。
ところが、Filecoinでインセンティブを支払っても、それはデータの永続保管を約束するものではありません。
IPFSにおけるデータ保管は期限が区切られた契約に基づいています。一方、データの保管には永続的にコストが生じます。したがって、いずれ契約が切れた段階でノードはデータ保管をやめることになり、そこで新たな契約を結べなかった場合はデータは失われてしまいます。
つまり、IPFSのデータ保存は継続的にコストの支払いが生じ、もし支払いができない場合はデータ保存を途中で断念せざるを得ません。
これに対し、Arweaveでのデータ保管は最低200年と、ほぼ永続的と呼んでも差し支えありません。また、コストもデータ保存を始める際に1度だけ支払うのみで、追加のコストはありません。
保存するデータの容量が大きければそれなりにコストはかかりますが、永続保管が前提であることによる使いやすさと総コストの把握のしやすさは、Arweaveの強みと言えるでしょう。
計算能力
ストレージとは少し話題が逸れてしまいますが、今話題になっている分散型ストレージはブロックチェーンを利用するもので、そのブロックチェーンはスマートコントラクトを掛け合わせることで無限の可能性を秘めることになると言われています。
そのため分散型ストレージとスマートコントラクト機能は、実は切り離せないような関係になっています。
ICPはスマートコントラクト機能と分散型ストレージをあわせ持ったような存在で、今回比較している3つの中ではスマートコントラクト機能(つまり計算機能)に関しては開発が進んでいます。既にICP上にはスマートコントラクトによって作成されたアプリ(分散型アプリケーション|Dapps)がいくつも誕生しています。
対してFilecoinやArweaveでもスマートコントラクト機能についての開発は進められています。しかし、こちらはストレージ機能を主としているため、まだスマートコントラクト機能についてはICPよりも具体化していません。
分散型ストレージを比較する場合は、この計算能力についても考慮に入れると比較しやすいかと思います。
まとめ
IPFS、Arweave、そしてICPはそれぞれに特徴や強みがあります。あらゆる点において優れている上位互換的な存在はなく、これらを使い分けたり、時に組み合わせて使うことが重要です。
分散型ストレージは急速に普及しつつあるNFTの領域での活用に注目が集まっています。NFTの売買や制作に関わっている方は、ぜひ分散型ストレージに関してより深く学んでみてください。
TOP画像:https://kripeshadwani.com/decentralized-data-storage/
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